特別メッセージ


ナミねえの写真 竹中 日頃からこのナミねぇを含めたプロップ・ステーションの活動を支援してくださっている皆さん方から、このチャレンジド・ジャパン・フォーラムのために、ビデオによる特別メッセージを頂戴しております。ここで、それを見ていただきたいと思います。
 最初は岩手県立大学学長の西澤潤一さん。続いて、高知県知事の橋本大二郎さん。写真集『チャレンジド』を制作してくださいました吉本興業の木村政雄さん。ジャーナリストでTBS『ニュース23』でもおなじみの筑紫哲也さん。最後に、同じくジャーナリストで、女性の優れた論客でいらっしゃる櫻井よしこさん。
 この5名の皆さんのビデオによる特別メッセージをいただきます。

西澤潤一(岩手県立大学学長) 

西澤学長の写真 チャレンジドの皆さん方、普通の人以上にご苦労しながら毎日を過ごしておられると思います。しかし、人間というものは、自分でも知らないぐらい、たいへんな才能を持っているものだと思います。
 私が中学2年の時に、時の県知事さんが突然中学校に現れまして、講義をしてくださったんですね。そのお話は、人間は素晴らしい才能を持っていて、どの方でも他の人と比べたら絶対負けないところが、どこかに必ずあるというものでした。
 ただ、本人は気がつかない。親にもわからない。先生にもわからない。一生の間、必死になって自分で努力を続けていった人が、自分の才能を見出すことができる。もちろん全部ではありません。一部です。そういうふうに言われました。
 私もその後、何十年と随分苦しい思いをしましたけど、その時に林先生の話を思い出すんですね。「まだ自分には才能があるかもしれない。こんなことで諦めないで、もう少し頑張ってみよう」と。それで、また頑張りますけど、なかなかうまくいかないですね。また諦めようかなと思うんですけど、またその言葉を思い出して、もういっぺんだけ頑張ってみようと思うんです。
 そういうことを何遍も何遍も繰り返しているうちに、ある日突然、光が差したみたいに、それまでどうにもわからなかったことが、パーッと見えてきたんですね。
 ホーキングというイギリスの学者がいます。宇宙の研究では世界の第一人者の一人ですね。この人は筋萎縮性側索硬化症という病気で、もう車椅子でしか動けない。声も出せないので、話もできない。そういう人が素晴らしい仕事をしているという意味で、今日のヘレン・ケラーみたいな人ですね。しかも、この人は今、宇宙物理学では第一人者ですから、ご自分の持ってる才能を十分に生かしていくと、そういうことできるという一つの例ではないでしょうか。
 私なんかも、まったく暗闇の中で、ただ必死になって歩み続けてきました。戸惑っていてはダメだから一生懸命歩こうと思って歩いて行ったわけですが、そのうちにある日突然、光が出てきたんですね。
 だから、親父なんかにも、ひどいことを言われたものです。弟と二人で親父に散歩に連れて行かれたとき、よその人に会ってお世辞を言われますとね、父はこう言うんです。「弟のほうはいいがね、兄貴のほうはどうも出来が悪くてね」と。
 これはショックですよ。で、そんなふうにまで言われて、ずいぶん落ち込んだ気持ちでいたんですけども、「とにかく、やるだけやろう」と思って頑張っているうちに、親父が変なことを言い出しましたね。「俺は初めからお前のほうが期待できると思っていた」なんて言うんですね。
 「子を見ること親に如かず」なんて言葉がありますけど、私は親なんてインチキだと思っています。それに比べると、先生の方がはるかに才能を見抜いてくれたなぁと思います。先生にもよりますけど、特に小学校の6年の時に受け持ってくれた先生は、そうでした。
 卒業式が終った後、母親と2人で呼ばれまして、いろんなことを言ってくださいました。お前にはこういう欠点があるから、こういうことを注意しなければいけないよとか。ここのところはいいと思うから、どんどんやって行けとか。後になってみると、その先生のおっしゃってくださったことが、一番よく当たっているような気がします。
 だから、皆さん方も、そういう本当にいいアドバイスをしてくれる人を、周りから見つけることが大事です。そういう意味では、やはりいろいろな方といろいろな話をしてみるとか、いろいろな方と付き合ってみることが、大きな力になるのではないかと、私は思っております。
 やはり苦労はすると思います。しかし、逆に言いますと、非常に才能のある人、たとえば走れば速いし、跳べば高く跳ぶしという人がいますよね。歌を歌えば人よりうまい。そういう人は、最後は何をやっても大丈夫だと思ってしまって、何も突き詰めてやらない。結局、世の中で何か抜きん出ることができない。結果的には、まとまった仕事が一つもなかったという、非常に残念な方がいっぱいいらっしゃるんですね。ですから、むしろ限られた範囲の中で自分の才能を探求していくということは、プラスになることがありますね。
 残念なことに、人生はたった一度しかないんです。われわれ人間というものは、自分の中にどんな才能があるのかということを、一日一刻を惜しまずに、コツコツ努力をして見つけていくものだと思います。
 もちろん、いろいろやり方も考えなければいけません。終わったあとでよく反省して考えてみますと、案外、「こうやればいいんだな」と突然気がついたりするんですね。真っ暗闇の中にいると思っていると、ある日突然、一条の光が差し込んできて、パァーッと世の中が明るくなってくるという体験を、一生のうちに何回も味わうことができるのではないかと思います。
 私も、もうだいぶ年になりましたけども、今でもそういう新しい可能性を目指して、自分の中にある、まだ表に出てきていない才能を掘り出して、世の中の人たちのためにプラスになるようなことをやっていきたい。そういうことを、今も若い人たちに負けないで考えている訳なんです。

橋本大二郎(高知県知事)

橋本知事の写真 皆さん、こんにちは。高知県知事の橋本です。今日は、「チャレンジド・ジャパン・フォーラム2002 in いわて」の開催、誠におめでとうございます。
 聞きましたら、このフォーラムも、もう今年で8回目だということです。ナミねぇが始められた、このフォーラム。ついに8回目ということは、「十年一昔」といいますから、そろそろ立派な伝統と歴史が培われてきたかなと、そんな気もします。
 また、今回岩手で開かれるということで、そのタイトルが「イーハトーブ byチャレンジド」となっていますが、最初は「forチャレンジド」、つまり「障害者のための理想郷」というタイトルだった。それをナミねぇが、そうじゃなくて障害者が作る、障害者によってできる理想郷ということで、「by」に変えたというお話を聞きました。
 「フォー・ザ・ピープル、バイ・ザ・ピーフル」と言ったリンカーンもビックリするような話かとも思いますけれども、いかにもナミねぇらしい話だと思います。
 ナミねぇはずっと言ってこられました。税金のお世話になる。言葉は悪いかも知れませんけど、施しを受けるような立場。そういう立場のチャレンジドではなくて、自ら納税者になれるチャレンジドを目指そうと。その運動、取組みは、もうずいぶん全国に広がってきていると思います。
 高知県にも、いくつかそういう事例が出てきました。たとえば、ナミねぇが目指しておられるITを使ったものとはちょっと違う分野ですけれども、高知市内に「ひまわり工房」という個人で運営をされている通所の作業所があります。
 ここを運営してらっしゃる女性の方はもともと学校の教員で、10年あまり特殊学級の先生をされていました。その時に、ある障害者のお父さんから、「神様は自分に200年ぐらい生きろというのかな」という話を聞かされた。つまり、自分の人生だけじゃなくて、子どもの面倒をみる人生も引き続いて送らなければいけないのかなと。
 そのお父さんにそう言われて、先生は「やっぱり子どもたちを自立をさせる、その手助けができるようにならないといけないな」と思って、学校を50歳で辞めて、この作業所を立ちあげられました。
 そこで作っているものはスェーデン刺繍のテーブルセンターとか、土佐紬という伝統の織物を使った袋物作りなどですけれども、コンセプトは「障害者だからこの程度でいいという妥協を許さない」ということ。できた物を見て、一般の作品と比べて弱いものはどんどん捨ててしまって納入をさせないということ。それを基本の理念にしています。こういう姿勢を貫いて、もう10年余りです。
 先生一人、生徒一人で始まったこの作業所も、今では5人の子どもたちが働く作業所になりました。そして、補助員の方も一人いらっしゃいますが、補助員の方のお給料に若干の補助金が出ている他は、全部ご自分たちで売ったもので運営をされています。年に何回も展示会を開いて、多い時は10日間に2500人から3000人ぐらいの方が来て、1回の展示会で100万円以上の売上げも出来るようになりました。
 このように、「障害者だからこの程度で」で済まさずに、よりよい物を作って、よりよい物をお客様に提供していく。そんな考え方がチャレンジドにも求められているのではないかと思います。
 また、もう一つの事例を言いますと、特例子会社と言って、企業が特別の子会社を作って、そこに多くの障害者を雇うという雇用の制度があります。この制度を活用して、県内にお弁当の箱などの上のプラスチックの蓋を作っている会社があります。ここも知的障害者15人、聴覚障害者お一人で、もう十分運営ができています。
 ここの社長さんの基本的な考え方も、先ほどの作業所と同じで、「障害者だからこの程度の物でいい」という妥協を許さない。自立のためには一般の会社と同じ製品を作っていくんだということです。
 このように、自立を目指すチャレンジドの取り組みが、ずいぶん広がってきました。今申しあげた会社の社長さんは、今お話したような工場をいっぱい作って、それをまとめて一つの企業にして、上場して、チャレンジドを単に納税者にするだけではなくて、株主にしたいと、そんな夢を語っておられます。ぼくとしても、また県としても、応援をしていきたいなと思っています。
 先日、ナミねぇに高知に来てもらって、小さな小さなシンポジウムを開きました。それは、各地で自立を目指して取り組んでいるチャレンジドのグループの集まりでした。そして、そのフォーラムの結果、高知市内と中村市内それぞれで同じような取り組みをしているグループがお互い連携をして、いろんな仕事が来たときに、「こんな仕事があるけど、そっちでやってみない」というネットワークを組んでいく、そういう新しい流れも出てきました。
 また、その中の話で、こんな要望が出てきました。市役所だとか県だとかで出てくる仕事、たとえばテープ起こしだとか、書類をタイプやワープロで起こすこと、いろんな仕事がありますけれども、そういうものを県外の業者に発注してしまっている例があるのではないか。せっかく障害のある人たちが頑張ろうというのだから、もっと県内でそういう仕事をやっていけるような仕組みが作れないか。そういう要望をいただきました。
 さまざまな課題もあるとは思います。だけど、これだけ各地域にチャレンジドのグループが、そして取り組みが出てきていますので、そういう皆さんに、県から、また市町村から出るアウトソーシングの仕事を優先的にやってもらっていく。そんな仕組みづくりを、ぜひ高知県で取り組んでみたいなと思います。
 これからチャレンジドの取り組みが、どんどん広がっていくと思いますが、やはり行政も一緒に皆さんの仕事づくりに手を差し伸べていきたいと思います。それによって、チャレンジドが「チャレンジド」という名前が忘れられるぐらい一般の社会に溶け込んで、ノーマライゼーションが進んでいく。そういう21世紀でありたいと思います。
 これからも高知県も頑張っていきたいと思います。ナミねぇもぜひ頑張ってください。そして、今回のフォーラムが大成功のうちに終わることを心から願っています。どうもありがとうございました。

木村政雄(吉本興業常務取締役=当時)

木村さんの写真 竹中さん、本日は本当におめでとうございます。
 「チャレンジド・ジャパン・フォーラム2002 in いわて」。今回で8回目だそうでございます。本日は私も参加させていただく予定ではいたんですけども、所用ができまして、あいにく参加することができません。本当に残念でございます。
 竹中さんとは一度しかお会いしたことがないんですけども、非常にパワフルなおばさんでございまして、自らも障害者の子どもさんをお持ちになり、非常にパワフルに前向きに生きていらっしゃる。その生き様に非常に感動いたしました。何よりも体験に基づいたお話が、非常に説得力があるなぁと、感心しております。
 世の中、非常に閉塞感が溢れておりますが、こういうパワフルな女性がいらっしゃるというのは心強い限りでございます。
 「チャレンジド」という言葉、初めて聞きました。神によって挑戦する機会を与えられた人たちのことを言うそうですけども、そういうふうに前向きに物事を捉えていくということが、何よりわれわれにも求められているのではないかと思います。
 竹中さんの後について、これからも頑張っていきたいと思いますので、吉本興業ともども幸せな社会づくりに貢献したいと思います。今回のテーマは理想郷づくりということでございますので、吉本興業もお笑いというものを通して、人々に感動を与え、元気を与えていく夢のある会社にしたいなぁと思っております。よろしくお願いします。
 本日は本当におめでとうございます。

筑紫哲也(ジャーナリスト)

筑紫さんの写真 おはようございます。筑紫哲也です。
 チャレンジド・ジャパン・フォーラム。これで8回を迎えるということです。「雨ニモ負ケズ、風ニモ負ケズ」ここまでやって来られたことを、たいへん、おめでたいと思います。そして、皆さんに敬意を表します。ナミねぇ、竹中ナミさんの情熱に巻き込まれておいでいただいている部分もあろうかと思います。皆さんご苦労様です。
 ナミねぇが始めたことには、いろいろ新しいことがありますが、何よりもハンディキャップ、つまり何らかの障害を負っている人たちという捉えられ方をしている人たちを、神に挑戦された人たちだという、そういう捉え直しをしていること。それからITに着目していること。そして、税金の払える人たちを作り出そうとしていること。そういうことを含めて、私はたいへん立派な、大事なことをやってると思っております。
 そういう人たちは社会のごく一部だと考えられがちなんですが、私は、そういう少数派にとって生きやすい社会を作ることは、実は多数派にとっても生きやすい社会を作ると、このことが非常に大事だろうと思っております。
 これは、たとえば高齢者に対するバリアフリー一つ考えても明らかでありまして、つまりハンディを負っている人たちにとって暮らしやすいところは、やがてそうなる高齢者にとってもいいだけではなくて、健常者という言葉がありますが、その人たちにとってもいい社会だということになります。
 そういう意味では、これはただ少数派だけのことをやっているのではないと思いまして、心から声援を送ります。

櫻井よしこ(ジャーナリスト)

櫻井さんの写真 今年もまた、チャレンジドの皆さん方を中心にして、フォーラムが開かれます。本当におめでとうございます。そして、このフォーラムの原動力となってきたナミねぇに、心からの尊敬の意を表呈します
 日本は21世紀に入って何が一番大切なのか。一人ひとりが粒だって、個性豊かに自立して暮らしていくこと。その中からエネルギーが生まれ、いろんなアイデアが生まれ、私たちの生活が充実し、そして社会としても国としても大きく成長していくことだと、みんなが考えています。
 小泉さんが目指したのもそういう方向ですし、私たちが望むのも、個人個人が本当に自分の力を発揮することができるような社会を作っていくことだと思います。その中で、チャレンジドの皆さん方は、とりわけ神様から期待されていると、いつも思っています。
 普通の健康な人よりも、少しばかり問題を多く与えられています。その問題を克服するには、その分、知恵を使わなければなりません。また、努力もしなければなりません。けれども、ナミねぇたちが始めたこの運動は、コンピュータという素晴らしい文明の利器を使って、チャレンジドの皆さん方が問題を克服し、そして自分たちの個性を、その問題解決のプロセスの中でもっともっと光輝かせていくような仕組みを作り始めました。そのような仕組みを、みんなで作ってきました。
 私は、チャレンジドの皆さん方が十分に活躍することが、私たちの社会をこれからの未来のもっと大きな可能性に向けて引っ張って行ってくれることになると思います。
 私たちはチャレンジドの皆さん方の活躍を見ながら、その視線の中から大きな勇気を得たり、喜びを得たり、そして自分もやれるんだという励ましを得たりしてると思います。コンピュータという文明の利器、これを上手に活用することによって、もっともっと素晴らしい人生を歩んでいただきたい。そして、素晴らしい社会づくり、国づくりを、広げて行っていただきたい。
 すでに10にものぼる県が、ナミねぇたちの考えに賛同して、行政の中に今申し上げたような仕組みを作って行っているとうかがいました。ナミねぇと、ナミねぇを囲む皆さん方の努力が、私たちの国を、現実の行政の中でも変えて行っているんだなぁと、実感してます。心から応援します。そして心からの愛を、皆さんに送ります。


会場の写真