セッション2・「暮らすこと、生きること、そして!?」

パネリストの全景 コーディネータ
 金丸恭文  フューチャーシステムコンサルティング
       代表取締役社長
パネリスト
 須藤 修  東京大学社会情報研究所教授
       CJF座長
 岸本周平  財務省理財局国庫課長
 西野 弘  サムハル社会福祉事業団日本代表
       プロシードCEO
 池田 茂  情報通信ネットワーク産業協会専務理事
 竹中ナミ  プロップ・ステーション理事長

竹中 ここでちょっとご紹介したい方がいらっしゃいます。
 先ほど宮沢賢治のお話の中で「賢治の考え方は心のユニバーサルデザインではないか」というお話がありました。実は私たちも、ユニバーサルな社会を作ろうということで、さまざまな活動を展開しています。
 今年の2月に女性の国会議員の皆さんの中で、ユニバーサル社会の形成を促進するプロジェクトチームが立ち上がって、私もお仲間の一人に入れていただいています。私はもちろん国会議員ではないんですけれども、そういう考え方を国会議員の皆さんにお伝えする、そして一緒に広めていくということで、入れていただいています。
 今このプロジェクトチームを、座長を衆議院議員の野田聖子さん、そして副座長を参議院議員の浜四津敏子さんがしてくださっています。今日はたまたま、浜四津さんがこの近所でお仕事があったということで、今立ち寄ってくださいました。ぜひ御登壇いただいて、一言だけユニバーサル社会という考え方も含めてご挨拶をいただきたいと思います。浜四津さん、お願いいたします。
浜四津議員の写真浜四津 皆様、こんにちは。ただ今ご紹介いただきました参議院議員・浜四津敏子でございます。私は、気迫溢れる、そしてまたユーモア溢れる、そしてまた本当に才能溢れる、優しさ溢れるナミねぇに惹かれまして、一緒に「日本をユニバーサル社会にしていこう」と考えています。そのための法律づくりを国会の中で一生懸命やる役割を、ナミねぇから与えられております。一生懸命頑張りますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございます。
竹中 ありがとうございます。野田聖子さんと浜四津さんに囲まれると、私は真ん中で二人分ぐらい膨らんでいるので、いつも恥ずかしい思いをするんですけれども(笑)。本当に女性の方々がたくさんいろいろなところで活躍されるようになって、嬉しい限りでございます。
河幹夫さんのメッセージ  もう一つご紹介があります。実は、今日のセッションに厚生労働省の参事官の河幹夫さんもご出演いただくというご予定だったんですけれど、今ちょうど支援費制度が立ち上がりまして、その渦中におられて、出演できないということで、詫び状が届いておりますので、読み上げさせていただきたいと思います。
 「第8回チャレンジド・ジャパン・フォーラム2002inいわて」にご参加された皆々様へ。8月28日の午前、セッション2のパネリストという素敵な役割を与えてくださったにも関わらず、そして私自身、皆様から学ぶことができるのを楽しみにしておりましたのに、霞ヶ関の住人としての仕事ができてしまい、欠席せざるをえなくなりました。竹中さん、村田委員長、岩手県の皆様に心よりお詫びいたします。
 遠くにはおりますが、銀河を包む透明な意志を共有させていただければ、ありがたく思います。会の盛会を心よりお祈り申し上げます。またの日に必ずや時と所を共にできることを希望しつつ。2002年8月19日。河幹夫参事官でございました。
 それでは、コーディネータの金丸さん、進行よろしくお願いいたします。

グローバリゼーションとさまざまな格差

金丸 おはようございます。フューチャーシステムコンサルティングの金丸と申します。本日は、セッション2のコーディネータをナミねぇより仰せつかりまして、いただいたタイトルが金丸sんの写真「暮らすこと、生きること、そしてIT」でございます。
 今日お集まりのパネラーの方々は、仕事の世界では蒼々たるメンバーだと思いますが、平素の暮らしの中のITということで多少の打ち合わせをしようと試みたところ、なかなかまとまりませんでした。さて、どんな展開になるのやら、やや波乱含みでスタートしたいと思います。
 それでは、最初にパネラーの方々それぞれの自己紹介をしていただこうと思います。その中で、このフォーラムとの関わりですとか、プロップ・ステーションとの出会いですとか、あるいは、ITの可能性についてのセッションですので、ITについてどんな関わりをお持ちになられたかみたいなことも、少し入れていただきたいなと思います。
 それでは、「最初は俺に話させろ」と自ら名乗り出た挑戦者がおりまして、まずその方からお話をおうかがいしたいと思います。財務省の吉本系とか言われていらっしゃる(笑)岸本さんですが、トップバッターをお願いします。
岸本 はい、おはようございます。財務省、昔は大蔵省と言いましたが、そこから来ました岸本周平と申します。役所から結局ただ一人の参加者になりましたけれども、よろしくお願いします。
 最初に自己紹介させていただきたいと思いますが、財務省の国庫課長と言いますのは、簡単に言うと金庫番です。ただ、国の金庫は、見てみたら空っぽでして、たいへん辛いものがあります〈笑〉。借金の証文はあるんですけど、金庫は空っぽでした。
 その前は、7月まで経済産業省に出向をしておりまして、ITの担当と、インターネットの時代におけるコンテンツの産業の担当課長をしておりました。もともとは大蔵省の人間で、若い時に4年ばかり社会保障の予算を見ていたこともありました。
 社会保障の専門家とは言えませんけれども、非常に深く関わってきた。そして、ITのこともやらせていただいた。ということで、昨年からこの会に出させていただいております。昨日お話がありました障害年金も担当しておりましたものですから、2巡目以降でお答えをしていきたいなと思っております。
 まず、私自身の問題意識をお話しておきたいと思います。「グローバリゼーションの時代」と言われますけれども、グローバリゼーションは、実は今に始まったことではなくて、2回目なんですね。
 もっと古くから言えば何回かの波が来るわけですが、一番最近で言いますと、19世紀に海底電信の施設ができまして、蒸気船ができました。この時初めて、人と物とお金がすごいスピードで国境という概念を無視して走り回り始めました。そういう意味で、19世紀に1回目のグローバリゼーションがありました。
 これが、1914年の第一次世界大戦で一旦途切れます。戦後もう一度新しいグローバリゼーションの流れが1990年代です。インターネットというすごい武器、ネットワークのインフラができて、今現在、私たちは19世紀のグローバリゼーションの数百倍、数千倍のスピード感と量のグローバリゼーションに立ち向かって行かなければいけないわけです。
 その時に、昨日の話でもありましたけれども、最も恐ろしいことは「デバイド」です。それは、デジタルのデバイドだけではありません。お金儲けのできる人とできない人。お金儲けのできる企業とできない会社。
 さらには、豊かな暮らしのできる国がある一方で、その流れから置いてきぼりになってしまった国があります。そこでは、暮らすとか生きるとかいっても、もちろん電話はありません、水もありません、食べる物もありません。今この瞬間にも、1時間に千人以上の子どもが刻々と飢餓で死んでいってるという状況があります。今日は中学生の方とか高校生の方がたくさんいらっしゃいますけど、どのように思われますでしょうか。
 国と国のデバイド、企業と企業のデバイド、そして個人と個人のデバイド、こういうものをどうやってなくしていったら良いのだろうか。私は今、幸いパブリックな仕事ができているものですから、その中で少しでも貢献したいなと思っております。これで、私の自己紹介を終わります。
金丸 あの、当初のお約束では、自分がトップバッターを買って出て、会場を明るい雰囲気にしてみせるという、そういうお約束だったのでは?〈笑〉
竹中 そうや! そういう約束やった(笑)。
金丸 あれほど、入念なトップバッターのみの打ち合わせをしたにも関わらず、かなりそれとは違う真剣な問題提起だったので(笑)、驚いております。
 ナミねぇ。
竹中 はい。
金丸 私は関西に14年いたものですから、ナミねぇと話すと、どうしても関西風になってしまうんですけども〈笑〉。ナミねぇのほうから、この後の展開について、われわれに対して何か指示とか命令とか、そういうのはありますでしょうか?
竹中 あのなぁ、コーディネータはあんたじゃろうが(笑)。
金丸 やっぱり聞いておかないと、いけないかなと。
竹中 後でムチが、とか?(笑) そんなことはないですが。
 今、岸本周平さんから、いきなり日頃の周平さんとは思えない、吉本系を逸脱したお話がありました。でも、きっと本当はこういう人だったんでしょうね。皆さんもきっと、こういう深い問題意識を持っている部分と、もっと日常的にいろいろ感じてる部分があると思うんですよ。
 今日は折角「暮らすこと、生きること」というテーマですから、真剣な話と同時に、自分が日頃感じていること、たとえば、どんなことから元気をもらっているか、勇気を振るい立たせながら生きているか、みたいなところも、ちょっとお話しいただけると有意義かなと思います。
金丸 なるほど。ありがとうございます。
岸本 すみません。ちょっと追加しても良いですか?
竹中 昨日と全然、雰囲気ちゃうぞ!〈笑〉
岸本 すみません。私は普段、吉本系なんですが、こういう会場の皆さんの真剣な眼差しを浴びてしまうと、相当緊張しまして、心にもないことを言ってしまいまして〈笑〉、お詫びを申し上げたいと思います。
 で、もう少し自己紹介をしますけど、実は、ブロードバンドインターネット時代のコンテンツ産業をずっと担当しておりました。本当にまだ誰も、キラーコンテンツを見つけていないんです。
 コンテンツについて日本で一番進んでいるのはどこかというと、実は吉本興業さんなんですね。「ファンダンゴ」というコンテンツの会社を作って、「ファンダンゴ・コリア」「ファンダンゴ・チャイナ」と、アジアの国にずいぶん進出しておられるんです。
 それで、私はお金を使わない産業政策として、吉本興業さんが経団連なんかに入るといいのではないかと思いつきまして、経団連にお願いをして、今は日経連と統合して日本経団連になりましたけど、そこに入っていただきました。
 その時に吉本の林社長から、「吉本もこれでマンザイ(漫才)会からザイ(財)界へ進出できた」と、たいへん感謝をしていただきました。そして、「岸本はん。あんたねぇ、もう役人なんかやっていてもあきまへんで」と、「うちへおいでなさい」と、そう言っていただきまして、天下り先は確保したわけでございますが〈笑〉。
 その時に「岸本はん。天下る場合も二つあります」と、「一つは経営の方。で、もう一つは舞台の方もおますけど、どうしますか」と〈笑〉、そういう話がありました。それで、「私は舞台のほうに行きたいんですけど」とお答えしましたら、「岸本はん。そやけど舞台は競争がおまっせ」ということで、断られたんですけれども。
 そんなことで、今、ナミねぇがおっしゃったように、自分の日々の仕事は仕事なんですけれども、できるだけ明るい気持ちで生きていきたいなぁとは思っております。
金丸 はい、ようやく本領発揮になって来ましたけども、「時間のかかるスターターだったなあ」と思います〈笑〉。

スウェーデンが教えてくれたもの

金丸 それでは、次に西野さん。
西野さんの写真西野 スウェーデンにサムハル社会福祉事業団というものがあるんですけど、私はそれの極東の代表と、それから株式会社プロシードという会社を経営しております。まず、自己紹介を兼ねて、このサムハルについてちょっと話をさせていただきたいと思います。
 サムハルは、日本でいうと特殊法人、政府が100パーセント株を持っている会社です。今、社員が約2万9000名ぐらいおります。スウェーデンは人口850万人ぐらいの国ですから、その中で3万人近い会社というのは、非常に大きな会社、たぶんトップ10に入るような会社だと思います。
 それで、その3万人近い従業員の内の93パーセントが、何らかの障害を持たれているチャレンジドということで、世界でも非常に希有な会社です。それが、設立からもう20年ぐらい経っています。
 スウェーデンは、障害というものの概念が非常に広い国です。いわゆる障害者・高齢者だけでなく、社会的なハンディを広く見ています。たとえば、ご両親が亡くなってしまった子どもとか、母子家庭とか。あるいは、海外のいろいろな戦争や紛争に追われてやってきた難民とか。そういう非常に多くのカテゴリーを包括して、「ディスエイブル(障害)」という考え方をしています。
 サムハル自身も、老人は勤めておられませんが、その他、難民を含めたディスエイブルがあると考えられる方々が勤めています。
 日本では、これから65歳以上の人口が3000万人を超えますし、若年人口は減ってきます。そうすると、海外から若い労働力を入れることも、たぶん必要になってくるだろうと思われます。そういう意味では、まさに日本社会も、スウェーデンが言っていた「ディスエイブル・ソサエティ」のようなものに、確実になって行くのではないかと思います。
 いろんな方々が社会福祉の視察ということで北欧に行かれますけど、だいたい帰ってくるとこう言います。「850万人の国だからできるんや」と。「日本は1億2000万人もいるから、そう簡単にできないよ」と。
 ぼくは、できない理由をたくさん並べる方が多すぎると思うんです。これからの時代は、「どうやったらできるんだろう」と考えて、先進的なことをやっている国や組織から学ぶことが大事なのではないと思います。
 さて、私がサムハルとの縁ができたのは、実は19歳の時でした。当時の日本では、スウェーデンを含めた北欧は、理想のような国のイメージでした。森と湖と社会福祉とフリーセックスの国ということで、若い私にとっては、非常に魅力的な国でした。それで、大学の2年の時に、スウェーデンとデンマークに1年ほど行きました。
 そこで見たこと思ったことはたくさんありますが、一つだけ申し上げたいのは、ここは、自分はスウェーデン人である前に地球人であるということを、本当にわかっている国なのではないかと。地球人としての責任をどう果たすかを基点にして、いろいろなことをしている面白い国だなぁと。それが、私の若い時の経験です。それ以来、スウェーデンとの関係もずっと長く続いています。
 今、仕事はIT関連です。といっても、ITの技術をどうのこうのというよりは、たとえばITをどのように経営の中で活用していくか、あるいは、どのように学校教育の中で活用していくか、ということに取り組んでいます。
 特に、学校教育への取り組みでは、数少ない会社の一つかもしれません。学校の教育の中でITを活用すると、まさにラーニングのプロセスが変わってきますので、それをどのようにするかといった仕事をさせていただいています。
 今日は、スウェーデンの例も挙げながら、いくつかまた後ほど話をさせていただければと思っています。よろしくお願いいたします。
金丸 どうもありがとうございます。西野さんも比較的真面目なスタートで、これも打ち合わせとは全然違うのですが〈笑〉。

今こそ、日本のITモノづくりのチャンス!

 今、「2万9000人の大きな組織」という話が出ましたので、次はぜひNTTにおられた池田さんに、自己紹介がてら関連のお話をお願いしたいと思います。
池田 はい、池田でございます。私はこのようなタレントをお持ちの皆さんと違って、NTTに入社をして今年池田さんの写真まで約40年間勤めていたということで、あまり面白くない人間のような気がしております。
 そのうち10年は、マルチメディアの仕事をしておりまして、幸いにも、ITの時代、インターネットの時代に、いろいろな形で携わらせてもらいました。そのことを、自分としては非常に幸せだと思っております。
 10年ぐらい前、「マルチメディアとは何であるか」ということを一生懸命模索をしていた、そういう時に、たまたま竹中さんとお会いしました。「チャレンジドを納税者に」というコンセプトと、パソコンやネットワークがそのコンセプトを実現するのに非常に有効だというお話をうかがいました。
 当時、私は「本当にどうやって儲けるのか」とか「どうやってアメリカに追いついたらいいのか」とか、そういったビジネスのことを主体に考えていました。ところが、竹中さんのいろいろなお話をうかがっているうちに、やはりメディアとか、そういったものは、人間を中心に考えて行かなければいけないと。考えてみれば至極当然なことかもしれませんが、そういうことを、チャレンジについてのお話を通して教えていただきました。
 その後10年、私はNTTでいろいろな仕事をしましたが、その上で、竹中さんに教えてもらった教訓を生かしていくことができたと思っておりまして、そういった意味ではたいへん感謝をしております。
 私は、この6月に「情報通信ネットワーク産業協会」というところで仕事をすることになりました。実は、この団体は、まさにITのモノづくり、物を作る立場の人たちが集まっている業界の団体でございます。
 そういう業界が今どういった状況になっているかと考えますと、報道されておりますようにアメリカでITのバブルが弾けたということで、ここ1、2年は、アメリカという世界のマーケットがたいへん冷え込むと思っております。そうなりますと、業界という立場から見ても、日本のマーケットが最も大事な状況になってまいります。
 これは、見方を変えれば、今こそ日本の中で最も日本らしいものを考えていく最大のチャンスということです。今までのいろいろな機械やシステムは、グローバルスタンダードに合わせることが最優先という形で動いてきました。しかし、いよいよこれからは、日本的な形、日本の生活に密着した形、そういった形のものをドンドンと進めて行くチャンスです。
 そういった意味では、日本の文化、日本の私どもの生活、高齢者やチャレンジドの皆さんのニーズを最大限尊重して行かなければなりませんが、それをして行けるチャンスが今まさに訪れたと、こう思っています。
 そういう意味で、私どもは物を作る立場から、今日的な状況をチャンスとして生かしながら、ぜひ貢献をしていきたいと思っております。後で、私どもが今やっている活動についてお話をさせていただけるかと思いますので、よろしくお願いします。
金丸 どうもありがとうございます。

将来はIT次第ではなく、ITを使うわれわれ次第

金丸 それでは須藤さん、お願いできますか。
須藤 はい。プロップとのつきあいは、もう7年ぐらいでしょうかね。
竹中 そうですね。もっとになるかもわかりませんね。
須藤 はい。CJFは、1回目からお付き合いさせていただいております。
竹中 もしもし?お付き合いではなくて、須藤さんがCJFの座長なんです〈笑〉。
須藤 いや、名ばかりで〈笑〉。しかし、まあ、そういう形で微力ながら、協力させて、というか、一緒に取り組ませていただいております。
 ここから学んだことは山ほどありますが、今年の5月だったでしょうか、神戸で「バリアフリーからユニバーサル社会へ」という大会がありましたね。
竹中 はい。5月12日に、先ほどお話ししました「ユニバーサル社会形成促進プロジェクト」の大会を、神戸でさせていただきました。
パネリストの写真須藤 私も、浜四津さんと野田さん、それから矢田市長と一緒にお話をさせていただきましたが、神戸では「ユニバーサル社会を積極的に作ろう」ということで、政策的にもかなりの動きがありました。
 たとえば、官庁は縦割りの構造を改めて、IT政策と障害者の自立のプロジェクトを融合させるような形で動こうとしています。これは、竹中さんたちのご尽力が相当にあったんだと思います。
 それから、先々週でしたか、三重県の北川知事、片山総務大臣と一緒にパネルディスカッションさせていただいたんですけど、三重県でもやはりNPOを重視していて、IT政策が、これもやはり竹中さんが関与されて、相当動いてるんですよ。ぼくもその中で、微力ですけれども、一緒に勉強させていただいています。そこから学術的に学ぶことは、山ほどあったと思います。
 単なる本書きや論文書きだけの人生なんてアホみたいな人生ですので、そういう形で、大学で教鞭をとりながら、世の中に関与して生きて、死にたいというふうに思います。もうちょっといいですか?
金丸 どうぞ、どうぞ。
須藤 昨日、大学院関係の仕事で夜中まで拘束されていまして、その休憩の時に「最近、何が頭に残った?」と聞かれました。ぼくは、「陸奥嵐と、ヤクルトにいた武上が死んだことですね」と答えました。「何で?」と言うので、「俺もだいぶ棺桶に近づいたなぁと思って」と、そんな話をしていたんです。
 棺桶に近づくというのは、ちょっと語弊があるんですけど、ぼくは腰が悪いんです。柔道やっていてだいぶ痛めたために腰が悪くて、その上、年とともに筋力が落ちていますので、動くのが面倒くさくなるんです。
 その時に、やっと実感できるんですよ。世の中、町の作りとかで「この野郎!」と思うことが山ほど出てくるわけです。で、これは勉強になるなと。腰が痛いために、逆にその視点から何か政策的なことを考えたり、学問的に生かせればいいなと、そういうことを最近考えています。
 そんな時に、先週、米内光政と東条英機を対比して描いた小説を読みました。産経新聞岩手版に載ったのを本にまとめた『東条英機』という小説です。米内光政は海軍大臣で首相も務めた岩手出身の方ですよね。それから東条秀樹の親父さんは東条英教さんという陸軍中将で、これも岩手出身ですよね。
 2人は対極的な生き方をするんですけれど、共通点もまたある。戦後は、米内光政は立派な人で、東条英機はA級戦犯だから悪い人だという描かれ方が多いんですけど、その小説を読んでみると、2人とも戦争を避けるために、けっこう動いているんですよね。その動きを読んでいると、「やはり歴史的評価というものは、時間が経ってみないとわからないものだな」と思います。
 われわれに引き寄せて言うと、ITが本当に世の中の役に立つようにするためには、われわれがどう動くかです。ITがどう世の中を変えるかではなくて、われわれがITを使ってどう世の中を変えるか、ということだと思うんですよね。
 そういう観点から、プロップとこのCJFにお集まりの方々みんなで、世の中をちょっとずつでもいいですから変える方向に持っていけたらいいなと思っています。
金丸 ありがとうございます。

ITは人間のコンテンツを引き出す

金丸 今日はシンプルな切り口を設けたいと思っています。まず、「これからどうなるか」という話はちょっと置いておきまして、ITはいったい何を変えてきたのか、あるいは、何が変わってきたのか、ぜひパネリストの皆さんのご意見をお聞きしたいと思います。
 今日は中高生の皆さんもたくさんいらっしゃいます。学校では、挙手をするのは一番勇気ある行為ですから、ぜひどなたか、挙手をしてお話しいただけたらと思うんですが‥‥。どうして皆さん、目を逸らすんでしょうか〈笑〉。
 あっ、西野さん!
西野 はい、先生!〈笑〉
金丸 はい、どうぞ(笑)
西野 たまたま今日ご一緒させていただいている池田さんが、NTTの常務さんの時代に、私のところに面白い宿題をくださいました。大英博物館には膨大なコンテンツがある。西野くん、あれを何とか電子化して、子どもたちのために使えないか。そういうお話をいただきました。
 先ほど、岸本さんが吉本興業に誘われたというお話がありましたけど、実は私は学生時代に吉本から誘われたことがありまして、その頃一緒に騒いでた人間が今では有名になっています。
 そんなことで、私も調子がいいものですから、さっそく大英博物館に行きました。そして、池田さんからいただいた話をお話したところ、それが運良く認められました。大英博物館には、毎日、世界中からたくさんの企画が持ち込まれるらしいんですけれども、その中からわれわれが出したアイディアを非常に買っていただいて、実は今、大英博物館では四大文明を順番にデジタル化しています。私どもはそのローカライズをしています。 
 大英博物館に打ち合わせに行きますと、皆さんが普段見られないようなものを見せてくれます。それで、その時、思いました。人類の歴史というのは、とにかく何かを残したい、表現したい、伝えたいということの固まりではないかと。だから、大英博物館にあるもの全部に、人間のそういう欲求に基づいたものが凝縮をされているのではないかと。
 われわれは今、個人でもいろいろな表現ができたり、それを世界中に伝えたりできるようになりました。たぶん、これは、人類が歴史を通じて一番強く求めてきたことの一つを可能にする道具を持ったということではないかと思います。
 日本という国は、池田さんも先ほど言われていましたけど、非常に歴史があって、いろいろな文化があって、コンテンツの固まりの国なんです。そういう意味で、ぼくは非常に可能性を持っていると思います。世界にはいろいろな国がありますけども、そういう意味で、これだけリッチな国はないのではないかと思います。たぶん、ここにおられる皆さんも、自分のコンテンツというものを見ると、自分が気がつかなかったようなキラキラとしたダイヤをお持ちなはずです。
 今、うちの社員に、3分から5分の自分史のデジタルムービーを作りなさいと指示しています。うちの会社は変わっていて、実は定年が99歳です。ぼくが社長として勝手に決めました。今、最年長が78歳で、一番若いのが24歳です。
 その人たちがどのようにITを使うか、一生懸命に見ているんですけど、自分史を作らせると、やはりお歳を取った方のは素晴らしいです。60年とか70年の歴史を3分に凝縮しますので、すごいインパクトがあります。たぶん、その方が1時間、2時間と自分で語るよりも、インパクトがあります。凝縮されたこのマルチメディアの環境で、まさにその方の人生のダイヤモンドがパパパっと出てくるんですね。
 普段、普通に仕事をしているだけでは、そんなものがあることは、わかりません。ところが、ITを使うと、その人間が持っているコンテンツを、本当に引き出すことができる。そういう意味で、ぼくは「ITのインパクトって、すげぇんだなぁ」と思い始めています。
 ですから、チャレンジドの方々についても、同じことを思います。同じ人間として生きているけれども、彼らなりの別な視点なり考えなりを持っている。ITを使うことで、それを伝えることができるようになるのは、非常に素晴らしいことではないかと。ちょっと真面目に話をさせていただきました。
金丸 すごくいい話をありがとうございました。

電子メールがなければ、今の私もプロップもなかった

金丸 では、他にどなたか。
須藤&竹中 はい(挙手)。
金丸 では、レディーファーストで。
須藤 はい。
金丸 レディーファーストという言葉を、無理矢理思い浮かべましたが〈笑〉。
竹中 無理矢理か!〈笑〉
金丸 ナミねぇは黙っていると死んでしまう方なので、ぜひ。
竹中 ありがとうございます。ご配慮いただきまして。
 昨日も申し上げたのですが、私自身のパソコンの技量はプロップ関係者の中で最低レベルで、全然うまくならない。両手の指一本ずつで打っていて、できることと言ったら文字を書くことだけなんです。メールは受発信できますけど、ホームページの情報は受信するだけ。発信は、ホームページが作れないとダメですから、自分では無理なんです。
 だけど、それだけでも、ずいぶん便利に使わせてもらっています。たとえば、私は各地に行ってプロップのことを伝えさせていただく役割をしているんですけども、初めて行く場所は、以前だったら電車の時刻表を調べたり、ちょっとでも安いビジネスホテルを探したりするのに苦労しました。
 ところが、今はインターネットを使えば、何時何分に家を出れば、何時何分にどこへ着いて、どこの宿が一番安くて、どんな料理が食べられるか、食べられないか、そういうことを全部、事前に自分で調べて、ちゃんと予定を立てて行けちゃうんですよ。私程度の技量でも、そういうふうに便利に使える。「すげぇなぁ」と思いますよ。
 もう一つすごいのは、メールです。プロップには、全国のチャレンジドや家族の方、あるいは行政の方や企業の方、いろいろな方から相談が持ちかけられます。これも昨日言いましたけど、その相談は、直接来られるとか電話とかファックスよりも、メールがすごい量になっているんです。
 このメールでのご相談に応じるというのが、実は私がオフィスにいる時の役割なんです。今、年間だいたい2000通ぐらいのメールにお返事を書くという状態ですから、もしペンでお返事を書いて、封をして、切手を貼って、ポストに出しに行ってというのだったら、とてもではないですけど、やっていられません。アッという間に死にます。
 どんなメールが来るかというと、たとえば、こうです。自分は去年交通事故で首の骨を折って、全身の麻痺になって、病院で手術してリハビリをしたけれども、残念ながら、ベットの上で過ごしています。やっとワープロが使えるようになったので、今、ナミねぇに、どうしたら自立できるかの相談をしています。
 そういう相談が、北海道から来たり、新潟から来たり、あるいは沖縄から来たりするわけです。しかも、家族などからではなくて、本人から来て、中には「親にも内緒で相談のメールを書いてます」といった人もいるわけです。「親に言うと、そんな体で働くこととか考えんでいいと言われるんだけど、ぼくはベットの上でも何かしたいんです」と。
 で、私としては、「そうか。一緒に頑張ろうぜ。で、今、どこまでできるんや?」みたいなお返事を書く。私がパソコンの前にいれば、メールを送ってくれた人とリアルタイムに遣り取りできる。
 だから、この道具がなければ、恐らく私は今の私ではないし、プロップの活動を一緒にやって行こうという人たちも、こんな大きな輪にはならなかっただろうなと思います。しみじみ、実感しています。
金丸 ありがとうございます。

トップと現場、地域とグローバル社会のノード〈結節点〉をITで

金丸 須藤先生、お待たせしました。
須藤 千葉県の堂本知事と一緒にディスカッションしたことがあるんですけど、たとえば、自然環境保護の情報なら自然環境保護の活動をやっているNPOがいっぱい持っています。須藤さんの写真そういう情報を、県が人員を投入して集めようとするとたいへんで、行政コストが高まります。そこで、堂本さんのところでは、NPOの人たちに協力してもらって情報を集める。環境政策でもNPOの力を借りて考えていく。そういう形で、いろいろ政策を進めていこうとされています。
 ITの時代になって、住民が自分たちの地域を自分たちで作っていこうという機運も高まって、行政と市民の間の距離感もだいぶ縮まってくる動きがあって、そこにトップとしての堂本知事が積極的に関わって一緒にやられようとしている。そこらあたりを見ると、「変わってきたなぁ」と思います。
 いろいろな自治体の動き見ていると、IT化がうまく行きそうなところは、トップがよく動いていますよね。こちらの増田知事も、発信力が非常に高い人で、相当に指導力のある方だと思います。
 今との対比のために、もう一回、先ほどの戦前の話を引きたいと思います。米内光政にしても東条英機にしても、一生懸命戦争を避けるための制度改革や交渉をやったけれども、どうしても流れを変えることができなかった。なぜかというと、トップの指導力が制度的に保証されていなかったからです。
 あの時代、中尉、少尉、大尉、そのあたりのクラスの動きがものすごい。ある意味では、戦後も評価されてきたボトムアップ型の意思決定、現場主義の意思決定が行われていた。しかし、それだけでは鳥瞰図が描けないです。だから、結局、群盲像をなでるみたいな形で、誰も全体像がよくわからないまま、変な方向に突っ込んで行ったんですね。
 だから、現場とトップの間がうまく関係づけられながら進めないといけない。それから、ノード=結節点になるような組織を、何らかの形で整備しなければいけない。
 で、今まではそういうものが作りにくかったんですけど、ITがけっこうそれを作りやすくしたんです。コミュニケーションのパイプができやすくなってますから、外部で結節点になるような存在、たとえばNPOなどとリンクしやすい。で、これが、いままでなかった調整的な機能を果たすんですね。
 ぼくは、プロップなんかはそういうポジションニングにあると思うんですよ。そういうものがもうちょっと全国的に、あるいは地域的にできないか。あるいは、先ほどの岸本さんの話からすれば、グローバルなノードというものを、ITを使って作ることができないか。もう技術的にも、政策的にも可能になっているのではないかと思いますね。こうしたことは、身近なことであると同時に、非常にマクロな現象でもあるという感じがします。

チャレンジドのIT環境を変えるためにも賢い政府調達を

金丸 はい、お待たせいたしました。
岸本 待ってました。西野さんとナミねぇからはITのメリットの部分、光の部分のお話が出ました。須藤先生からは、組織論としての見方が提示されました。日本の組織は、戦争前もそうでしたけど、今も問題がたくさんあると思います。そこで、私からは、今現在、私たちが直面しているマイナスの部分をご披露したいと思います。
 それは、私は政府の人間ですけど、今の日本の政府がいかにダメかという話なんですね。日本政府がお馬鹿さんだということは、皆さん、もう充分ご理解いただいていると思います〈笑〉。エイズの問題、BSEの問題とか、これでもか、これでもかと、変なことをするものですから、日本政府を信じている人は、この会場にはいないと思います。
 信じちゃダメですよ、だいたいお役人さんはウソを言いますから(笑)。私もそうですから、私の発言は特に気をつけて聞いていただいた方がいいと思うんですけど(笑)。
 今、日本政府は電子政府になろうとしています。去年だけで2兆2000億円使って、国と地方を電子政府化しようとしていますけど、単に電子化するだけなんです。いろいろな複雑な申請などを電子化しましょうということで、2兆2000億円使っています。でも、全然手続きとかは減りません。つまり、「お馬鹿な政府」が「お馬鹿な電子政府」になるだけなんですね〈笑〉。たまったものじゃないですね。これは、やめて欲しいと思います。
 もう少しスマートになりましょう。無駄な手続きはまずやめましょう。行政改革しましょう。スリムになった上で電子化しましょう。バックオフィスの会計業務、人事の業務なんてアウトソーシングすればいいんです。民間の会社、あるいはNPOにやってもらえばいい。窓口業務も、何もお役人さんがやる必要はないので、これもアウトソーシングする。そして、小さなスリムな政府、賢い政府になった上で電子化するということをやるべきだと思います。もう手遅れかもしれないんですけども、どうしましょうかねぇ〈笑〉。
 もう一つ。政府は2兆2000億円も税金を使ってITのソフトやハードを買うという素晴らしい消費者なんです。だけど、これが賢い消費者でないものですから、全然マーケットが良くならないです。
 自動車、家電製品、あるいは携帯電話。こういったものは、消費者の目が肥えていて、厳しくて、良い物しか買いませんから、どんどんマーケットが強くなっていきます。それで日本の企業はどんどん強くなっていったわけです。
 ところが、ITは、最大のお客さんである政府が厳しい注文をしないんですね。政府には専門的な人がほとんどいません。私も本当のところはよくわかりません。そうすると、100円の物を1万円で買わされていたりするんです。しかも、品質はよくない。チェックできないからです。そういうところを直さないと、本当に無駄なお金をたくさん使ってしまいます。
 池田さんは心の広い方ですから敢えて申し上げますけれども、NTTグループさん、富士通グループさん、日立グループさん、NECグループさん、この4大グループだけで、政府のIT調達の6割を占めています。独占状態です。日本IBMさんなどを含めた10大グループにすると、なんと75パーセント。中小企業なんか全然入れてもらえません。
金丸 アメリカではどうなんですか?
岸本 アメリカでは、1950年代に中小企業法ができまして、ITも含めて政府の調達の何割かは中小企業に出しなさいという決まりになっています。
 これは「セットアサイド」という考え方なんですけれども、日本でも、たとえば、ソフトウェアの20パーセントは中小企業から契約しなさい。その中の5パーセントはチャレジドの方が係わってる企業に発注しなさい。そういうことを決めれば、それでずいぶん世の中が変わるだろうと思っております。そのためにも政府調達側が賢くなる必要があると思います。
 もう一つ。昨日も安延さんがおっしゃっていましたけども、アメリカでは「セクション508」という法律があります。これは,ITのアクセシビリティーをすごく高める法律です。たとえば、アメリカの合衆国政府が買うパソコンは、すべてチャレンジドの方が使えるものでなければいけない。そういう物、つまりユニバーサルな仕様のIT製品でないと買っちゃいけないという法律です。
障害者席の写真  そうなると、どういうことが起きるか。たとえば、目の不自由な方は数が少ないですから、その人のための製品はどうしても価格が高くなるんです。ところが、政府の調達するものは全部、目が不自由な人にも使えるものでなければならないとなると、数が出ますから、値段がグンと下がるんです。そのことによって、チャレンジドの方が安く物が買えるようになるんですね。
 ぼくはアメリカに3年住んだことがあって、好きなところと嫌いなところがありますけれど、そういうところは素敵だと思います。われわれ日本も、賢い政府調達を考える中では、そういう制度を入れていったらいいんじゃないかなと思います。

ユニバーサルなモノづくりと安価なブロードバンド環境が進行中

金丸 池田さん。岸本さんから「心の広い池田さん」という話がありましたが〈笑〉。
池田 はいはい〈笑〉。では、二つお話を。一つは、お礼を申し上げたい件です。
 電気通信アクセス協議会という組織があります。ここでは、モノを作る側の団体と、実際にご利用なさるチャレンジドを代表する8つの団体の方に入っていただいて、両者がお互いに話し合いをして、より良いユニバーサルな製品を作ろうとしています。そのためのガイドラインを作ったり、あるいは、「U」というユニバーサル製品のマークを作ったりという活動をしています。
 話し合いをすると、要望する側と作る側の意見が合う時もあるし、合わないケースもあります。しかし、岸本さんがおっしゃったような政府調達をやっていただけたら、これは大いに進むのではないかと思っています。
 それで、お礼を申し上げたいのは、実はその電気通信アクセス協議会で、提供する側の部会長を岩手県立大学の伊藤憲三先生にやっていただいていることです。岩手県の先生に、日本全体のユニバーサルなモノ作りに貢献していただいていることを、事務局として厚く御礼申し上げたいと思います。
 もう一点は、商店街の活性化とITの活用です。実は、早稲田商店会の会長・安井潤一郎さんと高校生の社長・木下斉くんが、全国の商店街のネットワーク化を始めました。ずいぶん有名になり、木下くんはもう大学生になりましたが、そのネットワークはどんどん拡大をしています。
 そういう商店街の活性化の中には、人的な交流だとか物産の交流だとか、あるいは防災についてのお互いの助け合いだとか、いろいろな活動があるわけですけれども、実はそういった活動をしている人たちをつなぐのに使われているのは、IP電話です。
 これは、たとえば月2000円とか3000円という定額を払えば、1ヶ月話しっ放しでも料金はまったく同じというシステムです。これを、お互いの連携を強化をしていくために、有効活用されているわけです。
 先ほど岸本さんから、ブロードバンドの利用を大きく普及させるような力を持ったコンテンツがなかなか見つからないというお話がありました。おっしゃる通りですけど、その中で、一つには、時間を気にせず通話できるという環境に大きなニーズがあるのではないか。ともかく、従来だとそれだけの長時間話せば2万円、3万円とかかった通話が、いくら話しても2000円という環境が、今できつつあります。
 ちょっとだけ弁解をさせてもらいますと、日本は通信料が高い、高いと、ずっと言われていますけど、実はブロードバンド時代の料金は世界一安い。アメリカよりもはるかに安い料金の体系になっているんです。こういう環境を生かした活動は、これからどんどん出て来るのではないかと思っております。ちょっとPRめいたところもありましたけれど。
金丸 いいえ、ありがとうございました。

IT化と教育、スウェーデンと日本はこうも違う

金丸 さて、西野さん。冒頭、スウェーデンのお話がありましたけれども、今までのお話をお聞きになって、スウェーデンとどう違うか、また、われわれはどう現状認識すればいいでしょうか。
西野 スウェーデンは、実は日本とまったく同じスローガンで国の電子化を進めています。「世界最強のIT国家になる」。日本が森政権の時に決めたものと、まるっきり同じです。日本とスウェーデンの大きな違いは、スウェーデンはハードウェアではなくヒューマンウェアのインフラを作るんだということで徹底しているところです。
 それこそ保育園の園児用にまで、パソコンをどのように使ったらいいかを研究しています。デバイドが生じる可能性がある人たちの問題については、90年代半ばにハンディキャップ研究所を設立して、研究しています。
 先ほど申し上げましたような、さまざまな意味で社会的にハンディキャップのある人たち。その人たちが、どのようにITを使いこなしていくか。また、ITを使った介護機器などを、どのように開発するか。それだけを、約100名弱の専門職員を抱えて年間15億円ぐらいの予算で、ずっと研究し続けています。そして、大学などの教育機関や民間企業と連携をして、ITを徹底的に人間側に持って来るための活動をしています。
 サムハルの例で言いますと、お話ししたように2万9000人ぐらいの社員がいますけども、実は全員が家庭でパソコンとインターネットをつないでおります。先ほど「国がまとめて買うと安くなる」というお話がありましたけど、サムハルもまったくたく同じで、「3万本の回線と3万台のパソコン買うけど、なんぼで買える?」という買い方をして、従業員は毎月の給料からその代金をちゃんと払っています。
 とにかく、ITをできるだけ身近に持って来よう、人間側に近づけていこうということを、国を挙げて必死になってやっています。また、そういう意味で一般の人よりもITに距離感が出てしまう人については、できるだけのサポートをしていこうという制度的な手当てがきちっとされていますし、国民もそれを理解しています。
 日本は、やはり教育を見直さなければいけないのではないか。特に、先生の役割をもう一回見直さないといけないのではないかと思います。
 英語というのは見事なもので、「エデュケーション」は日本語で「教育」ですが、その英語の元になったラテン語は「人の資質を引き出す」という意味なんです。そこには「教える」という意味はないんです。
 で、今アメリカあたりでは「先生」も、ものを伝えるティーチャーからエデュケーターへ。さらに、「エデュケーション」の中でITがどんどん使われるようになって、ファシリテーター(援助する人)へという流れになって来ていると思います。つまり、何か知っていることを教えるのではなくて、子どもたち自身が何かを知りたい時、何かを自分でやってみたい時、わからない点をサポートしてあげる役割です。
 そういう意味では日本も、老人のことにしても子どもたちのことにしても、やはりもう少し人間側、本人側に立った考え方が必要だと思います。「ヒューマンウェアとは、いったい何か」ということを考えないといけない時期だと思います。
 スウェーデンなんかは、それを本当に社会を挙げて取り組んでいます。スウェーデンが言う「最強のIT国家」というのは、国民850万が自分の生活の道具としてITを使えるようになることなんですね。それが、最強の電子政府であり、電子国家だと。そういう意味では、先ほど周平さんが言われた「ただ電子化しただけの電子政府」の国は、大きな差をつけられてしまうのではないかと思います。
 で、もう一つ、ぼくがスウェーデンがこれから非常に強くなると思っている理由は、ノーベル賞です。ノーベル賞は、もうできてから100年ぐらい経ちますけど、実はこれによる知のネットワークは、すごいんですね。
 たとえば、今、バイオ関係の話題がいろいろありますけど、ぼくはバイオ関係でスウェーデンのトップクラスのベンチャーキャピタリストを知っています。彼らの恐ろしさというのは、たとえば、金丸さんがすごい技術を持っていて、それを彼のところに持って行けば、24時間以内に完全にその技術を評価できる。それだけのネットワークを持っているということです。
パネリストの写真  これはもう、長いノーベル賞人脈の蓄積の成せる技です。それが、先ほどナミねぇも言っていましたけど、どこにいる人とも簡単に電子的に情報交換できますから、もうアッという間に情報交換して判断を下して、良い物にはバッとお金を付けられるわけです。
 だから、これからは意志決定が非常に早くなっていくと思います。そういう意味では、これからは国の大きさとか距離ではなくて、優れた知のネットワークみたいなものを持っていることが、非常に大きな競争力になっていくのではないかと思います。
 スウェーデンはそれをいろんな形で実践している国ではないかと思います。
須藤 ちょっといいですか。
金丸 はい。
須藤 教育機関にいる人間として、ぼくは西野さんのおっしゃること、よくわかります。スウェーデンの大学で教えたこともありますので。
 会場の皆さんはあまりご存じないと思いうんですけど、青木昌彦という理論経済学の偉い先生がいます。ぼくは東大の経済学部で彼の理論をレクチャーしたことがあるんですけど、400人ぐらい受けて、青木昌彦の名前すら知らない学生が大半でした。
 ところが、スウェーデンのスクール・オブ・エコノミクスという大学で教えたら、全員が読んでいました。それで、「須藤。それはもう、みんな自分たちで勉強しているから、青木理論の紹介はいい。お前の理論を言え」と言うんですよ。
 ファシリテーターは、そのぐらい自分で努力して、ある程度のレベルまで行っている人たちに対して生きるんですね。あまりやる気のない人にファシリテーターだけだったら、だんだんダメになります。
 日本は、ある一定水準を満たした人たちがもっとレベルの高いところを目指すためのプログラミングが、あまりないんです。だから、そこを西野さんがおっしゃるようにやらなければいけない。そうしないと、世界で通用するすごい人は出て来ない。だけど、全部一律にそれやると、みんなダメになっちゃう。
 湯川秀樹は、「何であのアイディアが出て来たのか」と聞かれて、「子どもの頃、暗唱させられた論語がヒントになった。後は自分で考えた」と言っています。やはり、基礎は必要なんです。
 ただそれを画一的な方法で教えるだけではなくて、もう少し柔軟に教えていいと思います。たとえば、プロップでやってるような教育システムというのも、もうちょっと認めてもいいと思うんです。文部科学省のやり方だけが正しいわけではない。もっと多面的な方法を入れて、学んでいく回路をもっと複合的に作った方がいいと思いますけどね。

教育論、東大卒vs 中卒

金丸 ここからは、未来に向けて、どう考えて行くべきなのか、どう行動して行くべきなのかということも含めて、お話いただきたいと思います。では、岸本さんどうそ。
岸本 今のお話の関連ですけど、やはり教育システム自体を変えていただきたい。初等、中等教育で今「ゆとり教育」という名の「ゆるみ教育」が行われています。これは、要するに、100暗記させていたことを80にしてるだけだと思うんですね。
 湯川さんの話ではないですけど、やはり基礎的な知識をある程度暗記することは、しんどいですけど、けっこう大事な作業だと思います。ところが、日本の政府はむしろ「ゆとり教育」の名の下で、ちゃんとした先生もいないまま「遊べ、遊べ」と言っている。これは、ものすごくきつい状況だと思います。私はゲーム産業を担当していましたけど、もうロールプレイゲームなんかやれる子どもがいないというくらい、ゆとり教育の弊害が出ていると思います。
 もう一つ、大学ですけども、これは須藤さんにぜひお願いしたいんですけど、もう入試をやめていただきたい。入学試験さえやめれば、世の中、絶対良くなると思います。
 私も実は東京大学に入ったんですが、これ、入り方があるんです。単に勉強してもダメで、テクニックがあるんです。そのテクニックを今教えます。今の受験ですと、すごく簡単なんですよ。
論文も少しありますけども、ほとんど選択方式ですよね。で、まず一つの科目で試験が始まるでしょう。100の問題があるとします。まず、問題だけ読んで、難しいものにチェックを付けてください。20ぐらい。それは、絶対解いてはいけません。そんなのを解いていたら時間がかかりますから、優しいものを80やってください。
 時間が余ります。それでも、難しい20に手をつけたらアウトです。もう一回、やった80をチェックして、ケアレスミスをなくすんです。それで80の内8割ぐらい取れれば、どこの大学でも入学できます。受験秀才はそればっかりやっていたわけです。ほんまでっせ。
 そんなのが全部、役人になっているわけです。そうすると何が起きるかと言いますと、たとえば「不良債権問題が起きた」と。「これ難しいですね」と。「では、後で」と、こうなる訳ですね〈笑〉。
ぜひ入学試験、やめてください。未来に向けて、お願いします。
金丸 終盤に意外な展開を見せてきましたね〈笑〉。それでは、さほど勉強とは縁がなかったようにお伺いしておりますが、ナミねぇ。
パネリストの写真竹中 なんで中卒と東大卒が一緒の舞台に並んでるのか、ようわかりませんけども〈笑〉、私は学校とか勉強とかは、はっきり言って嫌いでした。子どもの時の趣味は木登りと家出で、まともに家におったこともないし、授業6時間あったらそのうちの1時間ぐらい出たらええところかなと。では何が好きかというと、高いところに登ってみたり、土管の中で新聞紙敷いて寝てたりと、そういうワケのわからんガキやったんです。
 当然成績も悪くて、弟に試験の時助けてもらったりしていました。「姉ちゃんはぼくの恥や」とか言われたりしながら〈笑〉。
 その私が「勉強せなあかん」「知りたい」と思ったのは、自分の娘が生まれて、重症心身障害で、どうやって育てたらええかわからない。マニュアルも育児書も何にもない。「おお、これ自分で何とかせなあかんねん」と思ったのがきっかけなんです。
 もうそれからは、いろいろな大学の図書館とか、お金がないのでタダで本を借りられるところを回ったり、脳の研究してる先生、目が見えん人のための研究してる先生、そういった先生方のところに押し掛けて行ったりしました。終いにはゴッツウ嫌われて、「またあんた来たんか」と。
 だから、私は何となく学校に行って勉強するという人が、ちょっと信じられないんですね。何か知りたいと思うこと、やり遂げたいと思うことができるのが、その人の勉強のきっかけになると思うんです。
 さっき周平ちゃんが言ったテクニックの勉強とは対極のところ。「もう知りとうて、知りとうて、しゃーない」という状況になって初めて、知ったものが残って行くと思うから、もう年齢とか障害のあるなしとかは、全然関係ないんですよ。何歳になったって、そういう衝動が起きたときは、勉強の第一歩なのかなと。「いつでもどこでも勉強できる」と思えたら、すごい明るい展望になるじゃないですか。
 プロップに来はった人でも、「自分はこんな障害があるから学歴がない」とか、ボランティアの人でも「高卒なんで、あんまり活躍できないんで、ボランティアします」とか、何かワケのわからんことを言うてくる人がいるんです。でも、「あんたは高校出てるんか。偉いなぁ。私は中卒やで」と言うた途端、えらい元気になりはったりするんです。
 学歴社会でしたから、学歴はやはり、その人にとってとても大きな人生の要素だったんだろうとは思うんですけど、私はもうそんな時代は、はっきり言って終わったかなと思っています。東大法学部出て、財務省におる兄ちゃんがこんなところに来てしゃべるんですから、しかも、自分らのやっていることを「馬鹿」と、自分らで言うんですから、もう時代は変わった。
 ですから、政府がやらなかろうが、誰がやらなかろうが、自分らでやる。その知のネットワークが、この会場にある。そう考えていきたいと思います。

ユビキタス時代に向けて、もっと技術を近くへ

西野 いいですか。
金丸 はい。
西野 ぼくは、たぶん周平さんとナミねぇの真ん中で、勉強は大嫌いでしたけど、学校は大好きでした。学校は遊ぶところで、ナンパのために行ってるんだと思ってましたから、非常に楽しかったんです。
金丸 それでスウェーデンまで行ったんでしょ〈笑〉。
西野 もちろんです。スウェーデンに着いて、最初に先生から言われました。「お前も知っているように、スウェーデンはフリーセックスだ。だけど、外国人のためにはそれはない。しっかり勉強せぇ」と。ショックでねぇ〈笑〉。
金丸 目的の大半は失われた(笑)。
西野 そうそう。その瞬間にねぇ〈笑〉。
「未来に向けて」ということですけど、ぼくはスウェーデンというのは実験国家で、非常に面白い国だと思っているんです。教育で言えば、まさしく先ほど周平さんが言われことですけど、スウェーデンでは入試がないです。「いつでも、誰でも、どこでも」という教育の基本がありまして、もともと勉強したい奴しか学校に行かないんですね、当然、学校に行っている人は、ちゃんと勉強するわけですよ。非常に単純なことだと思います。
 だから、日本も制度的にそうなればいいと思います。基礎教育は、やっぱりきちっとしなければいけませんけど、その後の興味なり能力なりは、本当に一人ひとり違うと思いますので、やる気のある人に機会を与えられるかどうかの一点に尽きるのではないかと思います。国としても会社としても、また家庭としても。
 やるべき人たちが、やるべきことをやっていれば、たぶんいい国になるはずなので、それをやっていないお馬鹿さんが多い国は、やっぱりダメな国になるだろうなと思います。ITは、それを分ける可能性をすごく持っていると思います。
 ただ、日本人はどうも技術というものを高く見すぎているところがあるなと思います。一例だけ挙げさせていただいて、私の話を終えたいと思います。
 シスコというネットワーク機器の会社がありますけれども、ここがシスコアカデミーという学校を開いて、ネットワーク技術を学ぶプログラムをやっています。世界にだいたい6000校ぐらいの学校がそれに加盟していて、250時間ぐらいネットワークについての授業をしています。日本では、まだ高校の加盟校がたぶん10校もないぐらいで、あとは専門学校とか大学を含めて100校ぐらいだと思います。
 実は、世界に6000校あるうちの8割、4000校を越えるぐらいがアメリカです。で、そのまた8割は高校なんです。ところが、われわれ日本人は、「ネットワーク技術者」というと「大学の理科系の専門課程で学ぶんだろう」みたいなイメージを持っているわけです。技術はもう目の前に来ているのに、どうも日本だけが、歳をとって高いお金を払って偉い先生に教わらないといけないみたいな意識で、技術が身近に来ていない。
 コンテンツの世界も、そうです。
 アドビという会社があります。「プレミア」とか「フォトショップ」という、皆さんも使ってるソフトを作っています。先ほどお話した3分の自分史のムービーを作るのは、私の会社が手法を持っていて、それをアドビの社長さん以下に全部見せたことがあります。
 そのムービーは3日間で作ります。また、60代や70代の社員は、当然ワープロぐらいしかできません。で、アドビの社長さん以下がぼくに何回も聞きました。「西野さん。これは本当にワープロしかできない人が3日間で作ったんですか」と。たぶん皆さんは、「日本がそのレベルのものを作るのには、たぶん50万円のお金と3ヶ月ぐらいの時間を使っているんだろう」と思っているんです。
 実は、マイクロソフトさんも含めていろんなITの会社が、もう技術を目の前に持ってきてくれているのに、ぼくら側が気がついていない。もっと悪いのは、大人がそれを若い人たちに伝えていない。こういう日本の現状を、ぼくは非常にヤバイと思っていて、もっともっとテクノロジーのオープン化みたいなことが、これからのネットワークコミュニティーの中で大事になっていくのではないかと思っています。
金丸 時間がそろそろなくなってきました。それぞれ、ラストメッセージということで、池田さんから、ぜひ日本の未来に対して、勇気づけるお話をお伺いしたいと思います。
池田 今、たまたま西野さんも竹中さんも「いつでも、誰でも、どこでも」とおっしゃいましたけど、実はその言葉は最近よく使われる「ユビキタス」という言葉の説明なんですね。私は最初に「ユビキタス」という言葉を聞いた時、「携帯電話が流行っていて、みんな親指を使うから、そういう文化かな」と(笑)。
竹中 そんな(笑)
池田 いや、正直に言って、本当にそう思っていたんですけど、実は「どこでも、いつでも、コンピュータ」と、そういう意味だそうです。
 で、何を言いたいかというと、実は今までのITは、個別の技術とかソフトとか訓練とかを、それぞれでガチガチに固めて、みんな要素要素にして、ビジネスとして成り立ったり、研修になったりしていたわけです。しかし、ユビキタスというコンセプトは、今度はその逆の大きな立場で全体に網を投げかけて、その全体の網の中でどういったものが出てくるかという発想に立つものです。
 今までが個別の積み上げだけだったとすれば、ユビキタスの場合はもっと全体を見て個別に行く。これは、非常に戦略を要する話になるわけですね。で、日本人の一番不得意なのが、この戦略ということです。
 私は、このユビキタス時代に日本が戦略的に取り組んでいくためには、技術とかメディアという発想ではなくて、まさに人間がどういう形で生きていくか、あるいは地球全体の環境の問題をどういった形で考えていくか、そういう視点からのコンセプト作りが必要だと思います。そういう意味では、ユビキタス時代というのは、まさにわれわれの文化、哲学、あるいは人間そのものを大切にする、そういう時代にしたいものだと思っています。
金丸 ありがとうございます。

刺激しあって、自分のシナリオの人生を

金丸 では、岸本さん、どうぞ。
パネリストの写真岸本 昨日、八角さんが問題提起をしてくださいました障害基礎年金のあり方。つまり、働いて収入が増えると障害年金が減らされるという制度設計について、コメントをしたいと思います。
 実は私、10年前の年金改正の時の担当をしておりました。正直に申し上げますけれども、その時は昨日聞いたようなお話を知りませんでした。私自身、本当に馬鹿だったんですが、障害年金の制度設計についてまったく問題意識を持たずに、従来の制度をそのまま延ばしてしまいました。たいへん残念で情けないと思います。
 実は、その障害年金のあり方について、今の日本政府全体がどこまで問題意識を持ってるかというと、やはり持っていないんだろうと思います。さっそく帰って担当者に伝えますけれども、今日は浜四津先生とナミねぇがおられるので、「障害年金は働いても減らさないぞ。むしろインセンティブにするぞ」というようなことを、ユニバーサル法案にぜひ入れていただきたいと思います。
 年金の制度設計は、もう政治しか変えられないわけですので、これはユニバーサル法案に入れていただきたい。それから、さっき申し上げました「ユニバーサル仕様の機械を政府は買いなさい」という条文も、ぜひユニバーサル法案に入れていただきたいと思います。それでずいぶん未来が良くなると思います。以上です。
金丸 はい。ぜひお願いします。
竹中 財務省の公務員さんからナミねぇが陳情を受けているんですか(笑)。
岸本 よろしくお願いします。
竹中 はい。浜四津さん、頑張りましょう。
金丸 はい。それでは須藤さん、お願いします。
須藤 調達の問題が岸本さんから出たんですが、西野さんや岸本さんがものすごく頑張られて、政府が今年の3月28日付で「調達方式を改めよう」という文書を出しています。今、47都道府県12政令指定市にはその文書が行っています。
 私が顧問をさせていただいている県には、「考えてみてください」という文書が政府から来ています。今、私は「福」が付く県のIT顧問をさせていただいているんです。福島県、福井県、福岡県。「三福」で、めでたくていいなと思っていますけど、残念ながら岩手県のIT顧問はしていません。
 で、今、市町村と協議しています。ですから、岸本さんや西野さんが去年から今年まで頑張られた成果が、自治体でも出てくると思います。
 自治体レベルでユニバーサルデザインの機器を導入するということは、やろうと思えば簡単にできることです。別に政府の言うことなんか聞かなくてもいいわけですから。ですから、ぼくが関係してるところだけでも、県の方々と一緒にやってみようと思います。
 それから、もう一つ言わせてください。大学を馬鹿にする発言もずっとありましたけど、偉大な西澤先生からメッセージをいただいているので、ここはちょっと言っておかなければと思います。
 大学というのは、そこでおまんま食う人間にしかわからないすごい世界なんです。外から学者になられた方は、驚かれると思います。見えないんですけども、ものすごい競争です。もう季節がわかりません。ぼくも、20代30代の頃は季節の変化がわかりませんでした。1日12時間以上勉強して、あとは寝てるだけ。そのぐらいやらないと通用しないんです。そこでやっと、何かが出るんです。人とは違うものが。そのぐらいやってます。
 でも、これはもうちょっと距離を取って見ると、「オタク」だと思うんですけどね〈笑〉。ただ、そういうオタクがどのぐらい世の中に役に立てるかということを、もうちょっと考えなければいけないと思います。
 そういう意味では、大学ではないですけど、ぼくの郷里の近く、鳥取県米子市に「まつもとゆきひろ」さんというすごい人がいます。一般にはほとんど知られていないんですけど、金丸さんはご存知だと思います。プログラミングで世界有数の人です。「ルビー」という、世界中のプログラミングをする人に使われているソフトを作った人です。
金丸 そうですね。デファクトになっています。
須藤 こういう人は、家で作っています。大学なんか関係ないんですね。それでも、できるんですよ。ナミさんが言ったように、本当に必要と思ってやると、本当の学問ができて、本当に身になるんです。そうでないと、身につかない。すぐ忘れます。耳からポロポロこぼれて行っちゃいます。
 だから、本当に興味を持ってやるということが重要で、そのネットワーク、刺激しあうネットワークを、われわれは作っていきたい。そのためのCJFであるということを、最後に強調したいと思います。
金丸 それでは、最後にナミねぇ、一言コメントいただけますか。
竹中 ありがとうございます。とても楽しく有意義なセッションになったなと思います。特に、今回の特徴として、中高生が参加されていますのでね。CJFに中高生が参加されるのは初めてです。
金丸 嬉しいですよね。
竹中 その割には発言に注意がなかった部分がありましたけれども〈笑〉。
金丸 一部、不適切な(笑)。
竹中 ですけど、こういう幅広い層の方に参加していただいて、私たちも会場のほうからビンビン伝わって来るものがあって、日頃以上に緊張もしました。
 お話の中では、やはりITのすごさと、それから人間のすごさを、改めて感じました。どんな道具も、やはり基本は、人間がより良く生きたり、より良くつながったりするためにあるんだろうと思います。ですから、オタクの方も、官僚の方も、企業の方も、研究者の方も、みんなが人間という視点で、すべてのことを考えて行っていただきたいものだと思います。
 これを私のこのセッションでの最後の言葉にしますが、ほとんど司会しかしないで逃げ去ろうとしている、金丸さん! 最後にご自分で締めて終わってください。
金丸 今日は初めてCJFでコーディネータをやらさせていただきまして、パネラーの方の話をお聞きしてるときに、言いたいことが山ほどあったんですが、粛々と仰せつかったパネリストの写真職務に邁進をしてまいりました〈笑〉。
 今日、これをお聞きになった中高生の方々は、勉強していいんだか、しないほうがいいんだか。もし留学をお考えの方は、アメリカに行ったほうがいいのか、やっぱりスウェーデンがいいのか。いろいろ悩まれたと思うんです。東大法学部に行って官僚になってみても、どうなんだろう。先生になってみても、どうなんだろう。中卒、家出というパターンも悪くはないな、と(笑)。
 そのように多種多様な生き様が、短い時間でしたけれども展開をできたこと、拙いコーディネータにお付き合いいただいたこと、本当に感謝申し上げたいと思います。
 私自身は、ITそのものが自分の人生でありまして、ハードウェアではなく、目に見えない仕組みと格闘してきました。私は、高校時代の先生からは「こいつはとんでもない人間になる」と、ネガティブな意味で、ずっと言われました。しかし、自分で言うのも何ですが、たぶんこの中で私が一番お金持ちになったりもしておりますので(笑)、中高生の皆さんも、自分のシナリオの人生を送っていただくことが一番良いのではないかと、こんなふうに感じた次第であります。
 われわれパネラー全員は、毎年このCJFのお手伝いをさせていただくつもりでもありますし、それから、日頃、プロップ・ステーションの活動の下支えも喜んでさせていただくつもりでございますので、今日会場にいらっしゃる皆様と短い時間でしたけども、時間が共有できたことを感謝申し上げて、私の挨拶に替えさせていただきます。どうもありがとうございました。